一度食べたら忘れられない味を。たこせんで有名な永楽堂のこだわりと、地元明石への思い
「思い出深いお菓子は?」と聞かれて、頭に浮かぶお菓子はなんでしょうか。
100円を握りしめて駄菓子屋さんで買ったお菓子、旅先で買ったお菓子など、お菓子にまつわる思い出は、きっと誰にもあるはず。
「おばあちゃんの家に遊びにいったら、必ず出てくるお菓子」
私にとって永楽堂のたこせんは、そんな思い出深いお菓子の一つです。
ボリボリとした食感、香ばしい香り、ピリッと甘辛い味は一度食べたらクセになり、ついつい食べすぎてしまうほど。
「そのおいしさの秘訣や、お店のこだわりを知りたい」と思い、今回は永楽堂の代表取締役社長である永井達也さんにお話を伺ってきました。
(取材日:2018年2月22日、撮影:嶋田コータロー)
「手間こそ味の差」あかしたこせんができるまで
――永楽堂といえば、たこせんのイメージがありますが、やはり一番人気の商品は「あかしたこせん」でしょうか?
永井さん(以下、永井):あかしたこせんが一番人気ですね。お客様も「明石といえばたこ」というブランドイメージを強くもっているのか、東京の百貨店などに催事で出店してもご好評をいただいています。
――あかしたこせんは今からどれくらい前に生まれた商品なんですか?
永井:たこせんは明石海峡大橋ができる前です。1998年4月に明石海峡大橋が開通するときに明石が注目されるだろうと思い、「明石ってなんやろう?」と考えて、たこに辿りついた。
ちょうど27年前くらいですね。その頃にたこせんの製造を始めました。
「世界一の大橋ができた」ということで、橋が開通したときは全国各地から注目を集めていましたよね。ドライブインに商品を置かせてもらったところ、評判がよくて、そこから一気に有名になりました。
明石海峡大橋を渡ると、淡路島のドライブインに立ち寄る方が多いので、商品を知っていただく機会も多かったと思います。
インターネットの調査でも、お客さんの評判がよくて売り切れが続出し、当初は生産が間に合わないという状況もありました。そこから、どんどん力を入れていこうと。
――あかしたこせんは癖になる味で、私も1枚食べたらもう1枚…とついつい手が伸びてしまうくらい大好きです。そんなあかしたこせんを作る上で、永楽堂がこだわっているところは?
永井:たこの味は非常に淡白なんですが、あかしたこせんは長年開発してきた特殊なたれで味付けをしています。そのたれをでん粉に混ぜ合わせて、少し湿ったような、粉のようなネタが出てくる機械で挟んでいく。
普通はそれで完成なんですが、永楽堂ではそこから今度は油に投入して、一旦揚げるんです。揚げた後に回転させて、油を飛ばしたものが1枚ずつローラーに乗り、今度はローラーで醤油のたれに挟みこむ。
できたものは湿っているので、その湿りを乾燥機に入れて乾燥させた後、包装機に入れていきます。通常はたれをつけて、焼いたら終わりのはずなんですが、その後さらに手順をふんで作りあげています。
――なるほど。すごくたくさんの工程をふんでいるんですね。
永井:私は「1回食べたら忘れられない」というものを作りたい。ですから、油で揚げたり、油切りをしたり、乾燥機にかけて、醤油だれをローラーで挟んでまた塗って、湿ったものをわざわざ乾かす。
そんなことをしなくても、おせんべいは作れるんですが、そうすることで凝縮した味が足されていきます。私は、手間こそ味の差だと思うんですね。
――手間こそ味の差…というのは、「まさに!」という感じがします。ところで、たこせんに関しては他にも色々な味が出ていますよね。
永井:明石海苔せんや、めん玉たこせんのほかに、季節に応じた期間限定販売の商品もあります。
いまからであれば、桜の味がするたこせんべい。それから、鮭バター。この2つは去年から販売を始めました。
今年の夏から発売する限定商品も色々増えていく予定です。
また、有馬温泉や静岡の古い酒屋さんなど、コラボレーションした商品の開発にも力を入れています。
静岡の商品は、富士山を明石のたこが登っているデザインで、明石だこが全国を一人旅をしているイメージ。明石が好きなので、明石を発信していきたいと思って、「明石だこ」とパッケージにも記載しています。
永楽堂の社長がおすすめする、明石真だこ一色の「明石ぺったん焼」
――人気商品はあかしたこせんということですが、永井社長が個人的に好きな、おすすめのお菓子はありますか?
永井:私は明石ぺったん焼が好きですね。なぜ、ぺったん焼きを作ったかというと、明石産の真だこ一色のものを作りたかったからです。
魚の棚店で7~8年前から作り始めたんですが、機械のボタンを押すと自動でたこがプレスされて、せんべいが作れます。魚の棚店では、焼き立てあつあつのぺったん焼を召し上がることもできますよ。
私は「これが明石だ」というものを全面に出していくことが好きなんです。
来年、明石は市制100年 、明石城築城400年という節目の年を迎えるので、それに向けて明石一色のプレミア商品も作りたいと考えています。
「創作が好き」という社長がつくる、味のあるデザインと文字
――インスタグラムの動画で、筆ペンを使ってたこの絵や文字を描かれているのを拝見しました。とても達筆だなと思って見ていたんですが、商品のたこも社長が描かれていたんですね!
永井:私が描きました(笑)。
永楽堂のたこの絵や文字は全て私が描いているんです。下手なんですが、個性のあるデザインにして、これを見たら永楽堂と分かるようなものにしたかった。
3月から発売のふりかけ「明石たこせんふりふり」のデザインも私が担当しました。
これは、明石の鍵庄(かぎしょう)さんという海苔屋の「一番摘み」という海苔を刻んだものと、あかしたこせんを砕いたものが入っています。
東京のある会社の社長さんが「たこせんを割ってお茶漬けにすると、おいしい」とおっしゃっていた話を聞いて、そこから「ふりかけを作ってみよう」と思ったのがきっかけでした。
ご飯にはもちろん、ステーキやサラダなど、何でもふりかけて食べていただけるので、ぜひ手に取っていただけるとうれしいです。
――確か商品のパッケージには、たこの物語も書いてもありましたよね?
永井:明石には「むかし足の長さが8~12mほどの大だこが沖から上がってきて、
また、
――御多幸まんじゅうのたこの絵は五本足ですよね?あれは何か理由があるんですか?
永井:御多幸の「御」と五本足の「五」をかけたものです。
――なるほど!
永井:「御多幸お祈り申し上げます」といいますよね。形も迷ったんですが、「人の幸せを願うたこに生まれ変わったんだ」という物語を考えて、五本足のたこが生まれました。
――お話を伺っていると、色々なアイデアが商品に生かされているなと感じました。元々、絵を描いたり、物語を考えたりするのがお好きなんですか?
永井:創作は大好きです。アイデアがたくさん思い浮かぶわけではないのですが、フッとしたときに生まれてくるんですね。
元々、時間がかかるので字を書くのは苦手だったんですが、筆ペンを使えばスラスラと書ける。筆文字は和風で、おせんべい屋らしく見えますよね。
あるとき暇があったので、「何か描けないかな」と思っていたときに事務所でたこを描いてみたら、突然、手が勝手に動いて綺麗な絵が描けたので、それを看板にすることにしました。
お店のカラーを紫色にしたのは、夢に出てきた紫色の龍が印象深くて、紫を使うようになったのが始まりです。
思いが積み重なってできたものは強い
――ちなみに、お店に来るお客さんはどういう方が多いのでしょうか?
永井:やはり年配の方が多いですね。あかしたこせんが出てからは、若い層の方も来られるようになりました。
それまでは瓦せんべいや生姜せんべい、ピーナッツせんべいなどをメインに売っていた時代もあったので、年配の方が多かったです。
お酒のおつまみや、お茶にも合いますし、出来れば20代、30代の方にも食べていただいて、明石のことをもっと知っていただきたい。
明石の町が好きなので、明石の町を発信することが自分の商売に繋がればいいなと思っています。
――やはりそこには、根底に「明石が好き」という思いがあるからこそ、ということですね。
永井:そうですね。ですから、お店も明石一色。
私自身、明石で生まれ、明石で育ったので、「明石を全国に発信したい」という思いはものすごく強いです。
商売人として、自分の仕事が明石のためになればうれしい。それが「自分の仕事に誇りをもてる」ということにも繋がっていくと思っています。
――永井社長が考える、明石の魅力はどこだと思いますか?
永井:明石は住みやすくて、食べ物もおいしい。少し路地裏に入ったところにも、おいしいお店がたくさんあるんですよ。明石焼きも東京や大阪で食べるものと、やはり明石で食べるものは全く違う。
同じレシピであっても、味が違うように感じるんです。広島焼きは広島で、讃岐うどんは香川で食べると、やはり一味違って、こちらで食べるものと何となく違うように感じませんか?
それは、その料理がその土地で培われた年数や、人の思いの積み重ねがあるからだと思うんです。だから、今までの長い時間をかけて作られた積み重ねは、なかなか追いつかない。
その思いが積み重なってできたものは、やはり強いでしょう。ですから私は、地元である明石の町でやっていきたい。そして、明石の町の活性化に繋がる仕事を一生追い続けたいというのが、自分の生きるテーマのひとつです。
「明石の町が元気になっているぞ」「明石のたこせんがよく売れているぞ」ということは、私の生きがいに繋がっていく。
「永楽堂のたこせんはおいしいな」と言われると、やはりうれしいです。それが私の人生そのものですから。
明石の活性化に繋がる仕事を続けていきたい
――最後に、永楽堂の今後の展開について教えてください。
永井:永楽堂はずっと明石をテーマに商品開発をしていますので、これからも、もちろんそれを続けたいと思っています。
また、商売人さんたちと一緒に考え、一緒に開発して、色々な意見交換をしながら、明石の町を活性化させていけたら面白いなと楽しみにしています。
やはり、商売人として明石の町の活性化に繋がるような商売をやり続けるのが一番。一生懸命やって、自分のお店が明石の発展に繋がればと思っています。
――永井社長、ありがとうございました!
インタビューを終えて
お店にお伺いすると、柔和な笑顔を浮かべ、気さくに私たちを出迎えてくれた永井社長。
インタビューの最中には、その言葉の節々から、一つ一つの商品へのこだわりや、地元明石への愛が伝わってきました。
インタビューが終わってからのお話の中にも、人生訓になる言葉をたくさん伺うことができて、とても充実した取材になりました。
永楽堂では今後、新しい季節限定商品も発売されるということなので、またお店に足を運ぶのが楽しみです。
永楽堂の商品一覧
おみやでは、永楽堂の商品を食べてみた感想も記事にしています。このページをきっかけにそれぞれのお菓子についてもチェックしていただけたらうれしいです。
永楽堂の店舗情報
本店
- 住所:兵庫県明石市西明石南町2丁目12-19
- 最寄駅:JR「西明石駅」
- 電話番号:078-922-1562
- 営業時間:10:00~18:00
- 定休日:毎週日曜日
西明石南店
- 住所:兵庫県明石市西明石南町2-18-1
- 最寄駅:JR「西明石駅」
- 電話番号:078-922-2111
- 営業時間:平日10:00~20:30(日曜日は18:00まで)
- 定休日:なし
西明石北店
- 住所:兵庫県明石市小久保2-2-1
- 最寄駅:JR「西明石駅」
- 電話番号:078-387-5900
- 営業時間:10:00~19:00
- 定休日:なし
明石銀座通り店
- 住所:兵庫県明石市桜町14-19
- 最寄駅:JR・山陽電車「明石駅」
- 電話番号:078-912-3567
- 営業時間:10:00~19:00(10月から3月の間は18:00まで)
- 定休日:なし
明石店
- 住所:兵庫県明石市本町1-2-23
- 最寄駅:JR・山陽電車「明石駅」
- 電話番号:078-917-1329
- 営業時間:10:00~17:00
- 定休日:毎週月曜日
明石魚の棚店
- 住所:兵庫県明石市本町1-2-9
- 最寄駅:JR・山陽電車「明石駅」
- 電話番号:078-912-3977
- 営業時間:10:00~18:00
- 定休日:毎週木曜日
大久保店
- 住所:兵庫県明石市大久保町駅前1-11-1
- 最寄駅:JR「大久保駅」
- 電話番号:078-928-0198
- 営業時間:平日10:00~18:30(日・祝のみ18:00まで)
- 定休日:なし
魚住店
- 住所:兵庫県明石市魚住町清水118-1
- 最寄駅:JR「魚住駅」
- 電話番号:078-945-0610
- 営業時間:10:00~19:00(日・祝のみ9:00~18:00まで)
- 定休日:なし
垂水店
- 住所:兵庫県神戸市垂水区神田町1-20モルティ垂水東館1F
- 最寄駅:JR・山陽電車「垂水駅」
- 電話番号:078-706-5025
- 営業時間:10:00~19:30
- 定休日:なし
そごう西神店
- 住所:兵庫県神戸市西区糀台5-9-4西神そごう1F
- 最寄駅:神戸市営地下鉄「西神中央駅」
- 電話番号:078-990-5123
- 営業時間:10:00~20:00
- 定休日:なし