うぐいす餅の名前の由来や歴史とは?特徴・よく食べる季節・豊臣秀吉との関係についても紹介
春を告げる鳥といえば「ホーホケキョ」の鳴き声でおなじみのウグイスですよね。
そんなウグイスの名前がついた和菓子が「うぐいす餅(鶯餅)」です。
うぐいす餅という名前は、鳥のウグイスと関係があるのでしょうか?
また、うぐいす餅の起源には鳥のウグイスが関わっているのかどうかも気になりませんか?
そこでこのページでは、うぐいす餅の名前の由来や歴史などについて紹介していきますね。
うぐいす餅の名前の由来
うぐいす餅という名前は、餅の色や見た目を鳥のウグイス(鶯)に似せているから名付けられました。
うぐいす餅は、餅または求肥(ぎゅうひ)を皮にして、中に小豆餡を包み込みます。
そして、外の生地の両端をとがらせるのです。
さらに上から青きな粉をまぶします。
すると、見た目も色合いもウグイスのようになるのです。
店によっては、ウグイスのような形に整えないものもあります。
ちなみに青きな粉は、青大豆を炒ってつくられます。
うぐいす餅と同じくウグイスのような色なので「うぐいすきな粉」とも呼ばれているのです。
なお、うぐいす餅はほかに「うぐ餅」などの別名もあります。
本当は「めじろ餅」?
うぐいす餅は、色がウグイスに似ていることが名前の由来と紹介しました。
多くのうぐいす餅は、淡い緑色をしていますよね。
でも実際のウグイスの色は、ほんのりと緑がかった薄茶色なのです。
色の種類に「うぐいす色」があります。
うぐいす色は茶色がかったくすんだ緑色で、実際のウグイスの色に近いです。
なぜ、うぐいす餅はウグイス色ではなく緑色になったのでしょうか。
諸説ありますが、メジロとウグイスを間違えたという説があります。
メジロはウグイスと同じ時季に見かける鳥で、緑色をしているのです。
もしかしたら、本当はうぐいす餅はめじろ餅と呼ぶのが適切なのかもしれませんね。
うぐいす餅の起源と歴史
うぐいす餅は、奈良県大和郡山市にある菓子店「本家菊屋」が原型を考えたという説があります。
安土桃山時代の天正13年(1585年)、大和郡山城(現 奈良県大和郡山市)に入った豊臣秀吉の弟・豊臣秀長(ひでなが)とともに、秀長の御用菓子職人として菊屋治兵衛(きくや じへえ)が郡山へやって来ました。
秀長は兄・秀吉をもてなす茶会を開くことになった際、治兵衛に何かおもしろい菓子をつくるように命じたのです。
そして茶会のときに献上したのが、粒餡を餅で包んで上からきな粉をまぶした一口大の菓子でした。
治兵衛のつくった菓子を秀吉はとても気に入り、秀吉が「うぐいす餅」と命名したのです。
秀吉が命名した菊屋治兵衛の菓子が、うぐいす餅の原型だといわれています。
その後、治兵衛は菓子店「本家菊屋」の初代となり、現在まで本家菊屋は大和郡山市で営業を続けています。
江戸時代になって、菊屋のうぐいす餅は「御城之口餅(おしろのくちもち)」と呼ばれるようになりました。
御城之口餅という名前は、本家菊屋の店が、大和郡山城の門を出て町人町の一軒目にあったことが名前の由来です。
現在も本家菊屋では、御城之口餅が販売されています。
本家菊屋の御城之口餅は青大豆のきな粉が使われていますが、色は通常のきな粉のような薄ダイダイ色をしているのが特徴です。
実際のウグイスの色に近い色ですね。
うぐいす餅は春の風物詩に
鳥のウグイスは、春になると求愛行動としてオスが「ホーホケキョ」と鳴きます。
ウグイスの鳴き声は、春の訪れを感じさせるものとして古来より日本人に愛され、ウグイスは別名「春告げ鳥」とも呼ばれていました。
そのため、うぐいす餅も春の和菓子として親しまれていて、春に茶菓子として出すこともあります。
江戸時代後期には、うぐいす餅が春の甘味としてすでに大衆に根付いていました。
江戸後期の弘化3年(1846年)に書かれた山東京山 (さんとう きょうざん) の随筆『蜘蛛(クモ)の糸巻』にうぐいす餅が桜餅とともに登場しています。
現在、うぐいす餅は春の時季限定で販売する店が多いです。
いっぽうで、うぐいす餅を通年で販売したり、長い期間にわたって販売する店もあります。
福井県三国町銘菓の鶯餅
実は、一般的に知られているうぐいす餅とは別の特徴のうぐいす餅があります。
それは、福井県三国町(現 坂井市三国町)の銘菓として知られる「鶯餅(うぐいすもち)」です。
見た目や色を鳥のウグイスに見立てているのは同じなのですが、特徴やつくりかたが異なります。
淡緑色の求肥で皮をつくり、中に白餡を入れ、片栗粉に砂糖を混ぜたものを上からまぶすのです。
そして両端を少しつまんで、ウグイスの姿に似せます。
三国は古くから港町として栄え、北前船の寄港地でした。
北前船の商人たちに、鶯餅が土産として人気だったのです。
三国の鶯餅は、江戸時代中期の享保4年(1719年)に創業した大和甘林堂(やまと かんりんどう)のものが知られています。
鶯餅は、三國神社の森で鳴くウグイスをヒントにしてつくられました。
現在でも、大和甘林堂では鶯餅が販売されています。
御城之口餅と同じく、大和甘林堂の鶯餅も実際のウグイスに近い色です。
さいごに
うぐいす餅は緑色が多いですが、まさか本当の鳥のウグイスは違う色だったとは驚きですね。
うぐいす餅の元祖とされる餅が薄橙色なのは、そのほうが実際のウグイスの色に近いからなのかもしれません。
また、うぐいす餅の発祥に豊臣秀吉が関わっているという説があるのもおもしろいですよね。
おみやでは全国のうぐいす餅を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考文献】
- 『日本国語大辞典』「うぐいす-もち」の項 (小学館)
- 『日本大百科全書』(ニッポニカ)「鶯餅」の項 (小学館)
- 『百菓辞典』「うぐいす餅」の項 (東京堂出版)
- 「本家菊屋の歴史」本家菊屋 公式サイト