「そこでしか買えないもの」を目指して。東京・三軒茶屋のおみやげ、三層のチーズケーキ”CHILK”

修学旅行で一番好きだったのは、おみやげを選ぶ時間でした。

普段の生活では出会えないお菓子を眺めてはわくわくして、その土地らしいおみやげはどれだろうと考える時間が好きだったからです。

それは今も変わらず、旅行先でおみやげを選ぶときは同じようにわくわくします。

一方で頭を抱えてしまうのが、地元のおみやげを選ぶとき。
地元でしか買えないおみやげってなんだろうと、一度迷い始めるとかんたんに答えが見つからないのです。

地元っぽいおみやげって、なんだろう。
東京に住むわたしは、いわゆる「THE東京」ではない、もっと”地元っぽい”おみやげはないかと調べていました。

そのとき見つけたのが「世田谷みやげ」です。

東京都世田谷区では、世田谷に縁のあるお店の逸品を「世田谷みやげ」として指定する取り組みがあると知りました。

世田谷みやげの冊子を見ていて気になった、小さな牛乳瓶に入ったチーズケーキがあります。名前は「CHILK(チルク)」。

2017年に世田谷みやげに指定されたCHILKは、東京・三軒茶屋にあるcafe The SUN LIVES HEREが作っている瓶詰めの三層のチーズケーキです。

三層の構造は上から、ふわっと濃厚な生クリームチーズケーキ、ベイクドだけどさっぱりなホワイトミルクチーズケーキ、トロッとしているけど食べごたえのあるNYスタイルチーズケーキ。

直径5.5cm、高さ7.5cmと小ぶりながら満足感もありつつ、ペロリと食べられます。

お店は東急田園都市線または世田谷線の三軒茶屋駅から徒歩7分、駅からすぐの栄通り商店街からちょっと歩いた先にあります。

世田谷のおみやげ”CHILK”について知りたくて、お店に伺いました。

お話してくれたのは、店長の相良さんです。

きっかけは、地元の人の質問から

ーーお店をはじめたときからCHILKはあるのでしょうか。

相良さん(以下、相良):お店を始めたのは2012年ですが、CHILKを販売したのは2017年の4月からです。CHILKを作るまでは、カフェの営業だけでテイクアウトはしていませんでした。

ーーCHILKを作ってテイクアウトも始めることにしたのは、どうしてですか?

相良:三茶(三軒茶屋の略称)って飲食店はたくさんあるけど、テイクアウトできるお店が少ないんです。

カフェに来てくれたお客さんに「このあたりでおみやげ買えるお店ありませんか?」って聞かれて、たしかにそういうお店がないなと思ったのがきっかけですね。

三茶は渋谷にも電車で2駅だしおしゃれな街のイメージがあるのに、なんでないんだろう。
もしかして需要はあるけど供給がない状態で、誰かがおみやげづくりをやったほうがいいんじゃないかと考えたのがはじまりです。

ーーその中でもチーズケーキにした理由はあるのでしょうか。

相良:もともとカフェでチーズケーキを提供していたからです。
僕自身、甘いものが得意ではないんですが、チーズケーキは食べられたのでお店でも出していました。

ーーだからお店のケーキも甘さ控えめなんですね。

“3”の文字に、思いを込めて

ーーCHILKは三層のチーズケーキですよね。”三”軒茶屋だから”三”層なんですか?

相良:そうです。三茶なので三層です。

本当は一層や二層のパターンも考えていたんです。でも一層だと同じ味が続いて食べ飽きてしまう。二層のチーズケーキはルタオのドゥーブルフロマージュがすでに有名。じゃあ三茶だし、三層にしようと決めました。

この辺は海や山の産業もないから特産物のおみやげも作れないんです。
そこで、わかりやすくてみんなが納得できるもの……と考えたら「3」だな、って。作ってみたら飽きずに食べ切れる、ちょうどいい食べごたえのものができたので、これだ!と決まりました。

ーー食べたとき、重たすぎないので満足感もありつつ「もう食べちゃった」と思いました。

相良:そのちょうどいい食感と量を目指しました。下二層は瓶に入れてから焼いているので、焼き時間は試行錯誤しました。

チーズケーキは焼けば焼くほど固くなるから、焼きすぎてるとあんなに小さいのにずっしりしすぎて食べきれなくなっちゃうんです。

柔らかければパクパク食べられるし、それに層によって味が変われば飽きない。だから、食べ切れて「ああもう食べちゃった」ってなるのはどんなのだろうってすごく考えましたね。

価値のある、商品力の高い製品を目指して

ーーCHILKは瓶に入っているのもあって「ちょっと特別なおみやげ」という印象を受けました。

相良:せっかく三軒茶屋のおみやげを作るのなら、しっかりと商品力のある製品をつくりたいと思ったんです。

そう考えたらプラスチックよりも瓶、ロゴもシールじゃなくて瓶にプリントされたものにしたいとこだわりました。

CHILKの瓶は牛乳瓶を模して、おしゃれな牛乳瓶を目指してつくったんです。

ーー牛乳……お店にはたくさん牛がいますよね。

相良:お客さんや友人が持ってきてくれました。

ーー材料の乳製品にもこだわってます!という意思表示だと思っていました(笑)

相良:もちろん、それもあります(笑)

ーー材料でこだわっているポイントはどんなところでしょうか?

相良:放牧牛の濃厚な生クリームや北海道十勝産のクリームチーズを使っています。生クリームもヨーグルトも、原料は生乳だけのものを選びました。

「絶対に無添加! オーガニック!」と神経質になっているわけではありませんが、子どもが安心して食べられる材料で作りたいなとこだわっています。

ーー今の材料に決めるまで、たくさん試作したんですか?

相良:たくさん試しましたね。クリームチーズはスーパーで売っているものから海外のものまで、いろいろ試しました。

一覧表を作って、たくさんの可能性の中からうちのチーズケーキにベストな材料を探して。海外のものがすべて良くないと思っているわけではなく、試していく中でたどり着いたのが今の国産の材料です。

ーー表を作ってたくさん試したんですね、すごい。

相良:もちろん全部を試したわけではないけど、ある程度の方向性が見えるくらいには試しました。

これからも材料を変えるつもりはありませんが、分量の改良はちょっとずつ続けています。

例えば、砂糖ちょっと多く入れちゃったの場合も大きな間違いでない限りは一度焼いてみています。もしかしたら、その分量のほうがおいしいかもしれないですよね。

食べてみておいしかったら採用するし、おいしくなかったら失敗ケースを見つけたことになります。失敗ケースを潰していくことで、より確実においしく作れる方法を見つけていけると思うんです。

ーー常にアップデートしているんですね!

三茶の人に愛される、三茶のおみやげになりたい

ーー世田谷みやげに指定されてから、何か変わりましたか?

相良:正直大きく変わった印象はないですが、お客さんの満足度は上がっていると思います。

CHILKは”三軒茶屋のおみやげ”と謳っているので、「世田谷のおみやげなんだ」と安心してもらったり話のネタにしてもらえたりすることは多いんじゃないかなあ。

ーーこれまでなかった”三軒茶屋のおみやげ”の役割をすでに担っている印象を受けました。

相良:一番目指しているのが、三茶の人が「これ、三茶のおみやげ」とCHILKを他の地域に持っていってくれることなんです。

この辺に住む人もそうじゃない人も、三茶のお土産としてCHILKを買っていってもらえると、すごくうれしいですね。

* * *

東京にある三軒茶屋という街は、修学旅行で必ず行くような大きなターミナル駅でも観光地でもありません。たくさんの人が暮らす街です。

そんな街だからこそ作られるおみやげはあって、「誰かに渡したくなるおみやげ」は地元の人に必要とされて愛されていくのだと思います。
そこでしか買えない、ちょっと特別な一品として。

あなたの暮らす街には、どんなおみやげがありますか?

cafe The SUN LIVES HEREで売っているお菓子

CHILK

瓶に入った三層のチーズケーキ。

店長の相良さん曰く、おすすめの食べ方は特になく、好きな食べ方で食べてほしいとのこと。底まで全部すくって食べてもいいし、最初は上だけ、それから混ぜてみて……といろいろ試して、変わる食感や味を楽しみたいですね。

CHILKは通販にも対応しています。気になる方はぜひ公式サイトをチェックしてみてください。

参考:CHILKの記事はこちら。

チーズケーキ各種

左から、
・生クリームチーズケーキ
・ヨーグルトチーズケーキ
・ニューヨークチーズケーキ

cafe The SUN LIVES HEREではカットケーキのテイクアウトもできます。

他にも、季節に合わせて限定のチーズケーキも販売していますよ。

お持ち帰りはもちろん、カフェで食べることもできるので、おしゃべりしたりゆっくりしたりしながらケーキを楽しむのもいいですね。

cafe The SUN LIVES HERE 店舗情報