柏餅の名前の由来や歴史とは?葉っぱが付いている理由も紹介
5月5日の端午の節句。
端午の節句といえば、柏餅(かしわもち)を思い浮かべませんか?
5月が近くなると、和菓子店やスーパーマーケットなどで柏餅がたくさん並べられますよね。
でも、そもそもなぜ柏餅を端午の節句に食べるようになったのでしょうか。
また柏餅の発祥や歴史なども気になります。
そこでこのページでは、柏餅の由来や歴史について紹介していきますね。
柏餅の特徴
まず、柏餅とはどんな菓子なのかを紹介しましょう。
柏餅は、球形や平たい楕円形にした餅を、カシワの若葉で包んで蒸した菓子です。
餅の中には、小豆あん(こしあん、または粒あん)を入れるのが一般的です。
しかし、地域や店によって餅の特徴に違いがあります。
たとえば、餅の中に味噌あんを入れる地域や店もあり、白味噌風味や赤味噌風味があるのです。
地域や店によっては、小豆あんのものと味噌あんのもので葉っぱの表裏をひっくり返して包んでいたりします。
また柏餅の餅は、上新粉(じょうしんこ)をつかった「しんこ餅」がほとんどです。
しかし地域や店によって、よもぎ餅の場合があります。
ほかにも桃色をした餅を包んで白い柏餅とセットで「紅白」にしたり、黄色い餅を包んだりするものもあります。
さらにはあんが餅からはみ出したものや、イチゴ大福のように餅の中に果実を入れたものまであるのです。
和菓子店がいろいろな工夫をして、新しい柏餅も登場しています。
柏餅の名前の由来や発祥・歴史
「柏餅」という名前ですが、名前のとおりカシワ(柏)という植物の葉で包まれた餅であることが名前の由来といわれています。
でも、必ずしもそうとはいえないのです。
『世界大百科事典』によれば、もともと古い時代の日本では食べ物を包んだり載せたりする植物を総称して「かしわ」と呼んでいたとのことです。
「炊葉(かしぎば)」が「かしわ」に変化したともいわれています。
たとえばカシワの葉以外にもツバキ、ササ、サクラ、カジ、カキ、ナラ、シイの葉などが使われました。
そのため柏餅の意味は、カシワなどの植物の葉っぱでくるんだ餅だともいえるのです。
柏餅は、食べ物を植物の葉で包むという古い時代の生活様式を残した食べ物といえるでしょう。
ちなみに『日本大百科全書』(ニッポニカ)によると、カシワの葉はしなやかで食べ物を包んだり載せたりするのにもっとも適していたそうで、カシワという植物の名前はそれが由来ともいわれています。
ところで、柏餅が一般的に食べられるようになったのはいつからでしょうか?
実は柏餅が食べられるようになったのは、中世ごろといわれています。
また、奈良時代に中国から伝来した唐菓子(とうがし)の一種「伏兎(ふと)」が変化したもので、室町時代ごろから現在の形になったという説も紹介していました。
ほかにも「ちまき(粽)」にならって、餅を葉でくるむようになったともいわれています。
さらに『日本大百科全書』によれば、現在の形に近い柏餅は、少なくとも江戸時代には江戸の町で食べられていました。
庶民のあいだでも、柏餅がよく食べられていたのです。
たとえば東海道の白須賀宿(しらすかしゅく、現 静岡県湖西市)と二川宿(ふたがわしゅく、愛知県豊橋市)のあいだにあった猿馬場(さるがばば)という場所に、柏餅が名物の茶店があったという記録があります。
柏餅にはなぜ葉っぱが付いているのか?
さきほど柏餅の葉っぱは、古い時代に食べ物を包んだり載せたりしていた名残だと紹介しました。
柏餅の葉っぱですが、ほかにも何か役目や効果があるのでしょうか?
実は柏餅の葉っぱは、香り付けの効果があるといわれています。
ほかにも持ちやすくし、手を汚さずに食べるためや、見た目を演出するためなどの理由もあるのだとか。
柏餅の葉っぱは食べていいのか?
柏餅と同じように葉っぱに包まれた餅として、桜餅がありますよね。
桜餅の葉っぱは食べられます。
では、柏餅の葉っぱは食べられるのでしょうか?
答えは「食べないほうがいい」です。
植物の葉などで、食べられないことはありません。
ただしさきほど紹介したように、柏餅の葉っぱは香り付け、持ちやすさ、見た目などのために付いています。
決して食べる目的で付いているわけではないので、食べてもおいしくありません。
衛生面を考えても、腹が下る可能性もありますので食べないほうがいいでしょう。
地域によって使う葉っぱの種類が違う
柏餅ですから、カシワの葉っぱで包むのが当たり前と思ってしまいますよね。
でも、必ずしも柏餅=カシワの葉っぱとは限らないのです。
実は、地域によって柏餅に使う葉っぱが違います。
カシワではなく「サルトリイバラ」という植物の葉を使う地域もあるのです。
また1枚のサルトリイバラで餅を包むものと、2枚サルトリイバラで餅を挟むものがあります。
カシワ自体が自生しておらず、カシワの葉っぱの入手が難しい地域もありますよね。
そのため、カシワの代わりにサルトリイバラが使われたという説があります。
いっぽう、もともと柏餅はサルトリイバラの葉っぱで包んでいて、江戸の町でカシワの葉っぱを使うようになったものが各地に広がったという説もあるのです。
古くは食べ物を包む葉っぱを「かしわ」と呼んでいたのですから、カシワの葉っぱ以外が使われても不思議ではありませんね。
現代では新鮮なカシワの葉っぱが広く流通しているので、多くの地域でカシワの葉っぱを使った柏餅が食べられるようになりました。
しかし、現在もサルトリイバラの葉っぱを使った柏餅をつくる地域や和菓子店があります。
なおサルトリイバラの呼び名は、地域によってさまざまです。
またサルトリイバラを使った柏餅は「しば餅」など、別の名前で呼んでいる地域・店もあります。
端午の節句で柏餅を食べる理由
柏餅といえば、やっぱり「5月5日の端午の節句に食べるもの」という印象が強いのではないでしょうか。
そもそも、なぜ端午の節句に柏餅を食べるようになったのか気になりませんか?
ここからは、端午の節句に柏餅を食べる理由を紹介しますね。
端午の節句に柏餅を食べるようになったのは、江戸時代初期からの風習です。
カシワの木は、夏が近くなると古い葉が落ちて、すぐ新芽が育って新しい葉が出ます。
つまり、葉が付いていない期間がとても短いのです。
そこで「家系が途切れない」という意味をかけ、一族繁栄・子孫繁栄を願って、男の子の成長を祝う端午の節句に柏餅を食べるようになりました。
もともと武家が始めた風習でしたが、やがて庶民のあいだや江戸以外の地域にも広がっていったのです。
さいごに
私は、当たり前のように柏餅=カシワの葉っぱで包んだ餅と思っていました。
そもそも「かしわ」という言葉が、食べ物を包んだり載せたりする植物の葉っぱだという意味だと初めて知り、ビックリです。
サルトリイバラの葉っぱを使ったものや味噌あんのものなど、さまざまな形態の柏餅があります。
インターネットなどで各地の柏餅を取り寄せてみて、さまざまな柏餅を食べ比べてみるのも楽しいかもしれませんね。