「こちらバターが主役のお菓子でございます。おひとついかがでしょうか」新宿のバターバトラーからつなぐ笑顔の連鎖
「ご主人様。こちら、バターが主役のお菓子でございます」
「ありがとう。いっしょに紅茶を淹れてくれるかな」
「かしこまりました」
……という日常会話を執事としている人は、少ないのではないでしょうか。
多くの人にとって執事のいる生活が非日常であるからこそ、謎解きをしたり悪と戦ったりする姿がドラマや小説で取り上げられるのかもしれません。
でも、執事は実在しています。わたしたちの日常の延長線上に。例えば、そう。新宿駅新南改札に。
今回おみや編集部が伺ったのは、バターを主役にしたお菓子のお店「バターバトラー」です。
お店の場所はJR新宿駅直結の商業施設「NEWoMan(ニュウマン)」にあります。
2017年に開催された「みんなが贈りたい。JR 東⽇本おみやげグランプリ」で総合グランプリに輝いたことで、より一層注目されました。
お店に向かうと、バターバトラー(和訳:バターの執事)に扮した店長の長部さんが立っていました。
「こちらバターが主役のお菓子でございます。おひとついかがでしょうか」
お店の前を通った人に、一口サイズの試食用フィナンシェを配っています。丁寧な言葉遣いや立ち居振る舞いは、まるで執事。
今日はバターバトラーの顔である店長の長部さんに、お菓子やお店にまつわるお話を聞きました。
(取材日:2018年1月30日)
主役を引き立てるものを、主役に
ーーお店に執事さんがいて驚きました。お店ではいつもこの姿なんですか?
長部さん(以下、長部):はい。いつも執事の姿です。お店のスタッフも執事になぞらえた制服を着ています。
ーー防寒している店員さんの制服もかわいいですね! ところで、どういう経緯でバターバトラーは生まれたのでしょう。
長部:わたしどもの会社のブランドでは、ひとつの食材をモチーフの軸にしています。新しいブランドを立ち上げようとなった時期、世間ではバター不足が叫ばれていました。
弊社の創業者は戦後の砂糖が手に入りにくい時代だからこそ砂糖を集めて、みんなが喜ぶお菓子を作っていました。
その思いを継承して、バターが不足している今だからこそ、喜んでいただけるバターのお菓子を作ろうじゃないかとスタートしたのが「バターバトラー」です。
ーー世の中の動きがきっかけで始まったお菓子なんですね。
長部:さようでございます。
それにバターはあらゆる場面において引き立て役になることが多い食材です。パンに塗ったり、料理のコクを出すために使われたり……無いと困るけれど、材料のひとつとしての役割がほとんどです。
そういう普段は主役を引き立たせている名脇役のバターを主役にしてみてはどうかと考えました。
ーー引き立て役のバターを主役に。
長部:はい。そこからブランドコンセプトを練っていく中で、主人を支える存在で表舞台に出ることがあまりない執事=バトラーをキャラクターにしようと決まりました。
そのキャラクター性はおいしさを「引き立たせる」バターと通じる部分があります。「引き立たせる」はバターバトラーのキーワードのひとつです。
ーーパッケージの黄色と青のコントラストにも秘密があるんですか?
長部:はい。黄色はバターをイメージした色です。その黄色を引き立たせる色はなんだろうと考えて、ティファニーブルーのような青色をかけ合わせました。
ーー黄色と青は執事とは遠い色味に感じていましたが、ここにも「引き立たせる」がかかっているんですね!
テレビとグランプリ、2回の転機の先に
ーーお店はオープン当初から盛り上がっていたのですか?
長部:最初はとても落ち着いていました。
バターバトラーにはお店が大きく盛り上がる転機が2回ありました。最初のきっかけになったのは2016年6月9日にフジテレビの『めざましテレビ』に取り上げていただいたことです。
Hay!Say!JUMPの伊野尾さんにレポートいただき、そのタイミングで「めざましテレビで紹介いただいたバターバトラーです!」と店頭でのお声掛けをして盛り上げて、お客さまに注目いただく雰囲気を作ったんですね。それで認知度や売上も倍になりました。これが最初の転機です。
ーーその後に「JR東日本おみやげグランプリ」ですか?
長部:はい。まさに2つめの転機です。NEWoManから後押しをいただいて、総合グランプリを受賞したのが2017年7月13日です。その翌日に日本テレビの『スッキリ!』をはじめとする多くのメディアさんで紹介いただき、さらに多くの方に知ってもらうことになりました。
おみやげグランプリをいただいたことで通りがかりの方に加えて「ここだよ!」とバターバトラーを目的にいらっしゃるお客さまが増えた印象ですね。
ーーバターバトラーが新宿に来る目的になっているんですね。
長部:本当にありがたいことです。
バターバトラーは催事で各地に期間限定のお店を出すことがあります。そのとき心がけているのは「新宿にあるバターバトラーがまいりました!」とお声掛けをすること。新宿にあるとお伝えすることで「前も買っておいしかったから」と東京にいらした際に新宿のお店に来てくださる方も増えています。
東京駅ではなく新宿駅にしかお店がないのは珍しいのに、わざわざ足を運んでいただけるのはうれしい限りです。
執事の世界観と、気持ちのよい接客を
ーー印象に残っている、お客さまとのエピソードはありますか?
長部:特に覚えているのは、結婚式の引出物にバターフィナンシェを買っていかれたお客さまです。
洋菓子店で働いていると話すその方は、洋菓子に関する知識もお店もよく知っていらっしゃる様子でした。たまたまそのお買い物のときにわたしが対応したのですが、それまでに3度バターバトラーをご利用頂いていたとのことです。
ご挨拶をすると「本当に素晴らしいお店を作られましたね」とお褒めの言葉をいただきました。
「引出物としておいしいものを渡すことも重要だけど、わたしが気持ちよく買いたかったんです。バターバトラーさんは買いに来た3回とも、対応してくれた店員さんみんなが素晴らしい接客でした。だからわたしの大事な日に、大好きになったバターバトラーさんのバターフィナンシェをみんなに渡せると思うと、すごく気持ちいいです」と話してくださったんです。
長部:人生の大事な節目にバターフィナンシェを選んでいただいたことだけでなく、わたしたちの接客をも褒めていただいて、すごくうれしかったです。
自分が褒められていることよりも、スタッフみんなが丁寧な接客やバターバトラーの世界観を常に心がけてくれていること、それが喜んでいただけたことがうれしくて。そのお客さまの言葉は一番印象に残っていますね。
ーーバターバトラーの世界観はスタッフのみなさんにも浸透しているんですね。
長部:オープンのときからこの執事という世界観はとても大切にしていて、お客さまとのやりとりでは電話の受け答えも丁寧な言葉づかいや振る舞いをするようにしています。
学生のスタッフもいますが、お店に入ったらお店の演者といいますか。そういう世界観はスタッフみんなで作るようにしています。
なにげない笑顔のきっかけになりたい
ーーバターバトラーを手に取ってもらいたいシーンはありますか?
長部:そうですね……(少し悩む)。
おみやげとしても、引き出物でもちょっとしたプレゼントでも、日常でも……渡す人もらう人、みなさまの笑顔のそばにありたいです。落ち込んでいるときに食べてホッとしてもらいたい気持ちもあります。
なのでシーンは限らずに、笑顔があるいろんなシーンにいたいですね。
ーー笑顔のきっかけにバターバトラー、ですね。
長部:おっしゃるとおりです。だからこそ、まずはお店がしっかりしないとと思います。
おみやげは誰かの笑顔を想って買うものですよね。相手の笑顔や喜んだ顔を思い浮かべながら選ぶものと考えています。
そんなお客さまの気持ちを崩さないためにも、バターバトラーで気持ちよく買い物ができたなと感じてもらって、笑顔の連鎖をつくっていきたいですね。
ーー長部さん、ありがとうございました!
インタビューを終えて
「ご主人様。こちら、バターが主役のお菓子でございます」
冒頭にも記したこの言葉は、バターバトラーのリーフレットにも書かれている執事のセリフです。お店のスタッフのみなさんも執事のようなていねいな口調で、お客さまひとりひとりとコミュニケーションしている様子が印象的でした。
謎解きも戦闘もしないバターのお菓子を持った執事は、今日も誠実にまじめにお菓子やお客さまと向き合っています。
バターバトラーで人気のおすすめお菓子を食べてみました
バターフィナンシェ
バターバトラーの看板商品、スイス産の発酵バターを使ったフィナンシェです。メープルシロップが染み込んだ生地はしっとり、さくっりした食感。フランス産ゲランドの塩も隠し味です。
バターガレット
フランス産の発酵バターを使用。バターの高級感、濃厚さをたっぷり感じられる味です。サクサクとした食感なので、実はお子さまにも人気のお菓子です。
バターシュガーケーキ
バターシュガーケーキに使われているのは北海道産のバター。たっぷりのバターが入った生地と表面のしゃりしゃりザラメがおいしさの秘密です。
バターキャラメルポット
バターがきいたタルト生地の器にカスタードクリーム、キャラメルソース、マスカルポーネクリームの3層がつまった贅沢スイーツです。
バターバトラーの店舗情報
- 住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-55 JR新宿駅構内 NEWoMan SHINJUKU内2F
- 電話番号:03-6380-1082
- 営業時間:8:00~22:00(土日祝8:00~21:30)
- 定休日:NEWoMan SHINJUKUに準じます。
- 公式ホームページ:https://butterbutler.jp/
※JRの入場券が必要です。